法律事務所におけるリモートワークの進め方

2022年07月25日

リモートワーク

新型コロナウィルス感染症が流行して以来、在宅勤務・リモートワークの推進が進みました。
2021年4月23日には日弁連で「テレワーク」という働き方に関するシンポジウム」が開かれ、法律事務所でもリモートワークの取り組みが進んでいます。
では、法律事務所がリモートワークを実施するためには、どのようなことが必要なのでしょうか。
このページでは、法律事務所におけるリモートワークの進め方についてお伝えします。

リモートワークとは

リモートワークとは、英語で離れていることを表すリモート(Remote)と仕事を表すワーク(Work)を繋いだ造語で、会社の所在地などの場所から離れたところで仕事をする事を指します。
法律や官庁の明確な定義があるわけではありません。
多くの法律事務所で検討されている自宅などでの勤務や、弁護士会・コワーキングスペース・カフェなどで仕事をすることも含みます。

テレワークとの違い

テレワークについては、総務省が「ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義しています(参考:テレワークの意義・効果|総務省)。
内容としてはリモートワークと変わるものではないので、2つはイコールであると考えておきましょう。

テレワーク・リモートワークで期待できること

テレワーク・リモートワークで期待できることを確認していきましょう。
上述の総務省のホームページの中の「テレワークの意義・効果」によると、

  • 少子高齢化対策の推進
  • ワーク・ライフ・バランスの実現
  • 地域活性化の推進
  • 環境負荷軽減
  • 有能・多様な人材の確保生産性の向上
  • 営業効率の向上・顧客満足度の向上
  • コスト削減
  • 非常災害時の事業継続

といった意義・効果があるとされ、総務省が中心となってリモートワーク・テレワークの推進がされています。

法律事務所でのリモートワークの現状

では、法律事務所でのリモートワークの現状はどのようになっているのでしょうか。
弁護士はリモートワークをできるが、事務員はリモートワークを行えないといった状態の事務所や、弁護士も含めてリモートワークができない状態の事務所などがあり、一般企業と比べるとリモートワークに対する取り組みが遅れているところが多いようです。
その原因は次の通りです。

紙文化でリモートワークに馴染まない

裁判所がまだ紙文化であることがリモートワークを阻害しています。
提出する訴状や、裁判所から送付されてくるものなどは、紙で作成したものを郵便で送付する、受け取る、あるいはFAXでの送信・受信という文化が根強く残っています。
弁護士が個人で職印を持っていて、事務所にも同じ職印があるという事務所も多いので、弁護士以外は自宅で仕事するのが不可能ということも珍しくありません。

機密情報を取り扱う

弁護士は守秘義務を負っており、扱う情報が外部に漏れることがあってはなりません。
リモートワークを行えば、事件記録などを事務所外に持ち出すことになるため、事務所外で紛失・盗難に遭う可能性が出てしまいます。

弁護士と事務員で業務内容が違う

弁護士と事務員で業務内容が違うこともリモートワークを進める上で難しいポイントです。
弁護士は事件記録さえ見られれば事務所に居なくても自宅で仕事ができることもある一方、郵送物やFAXの受け取りや提出や書類の収集のために官公署周りをする事務員は事務所に居ないと仕事にならないという場合もあるため、同じ条件でリモートワークを実施するのは難しくなっています。

資料請求はこちら 資料請求はこちら

法律事務所でリモートワークをするために必要なこと

法律事務所でリモートワークをするためにはどのようなことが必要でしょうか。

リモートワークをするための環境整備

リモートワークをする上では環境整備が不可欠です。
環境整備とは、リモートワークのために必要な機材やソフトなどを揃えることをいいます。
リモートワークを担当する人のために自宅用のパソコンなどの機器を購入する、web会議のためのカメラやオーディオ機器を揃える、事件記録や顧客に関する情報などを電子化するためにツールを導入する、などが必要です。

リモートワークをするためのルール整備

あわせて、リモートワークをするにあたってのルールの整備も同時に行う必要があります。
就業規則や出社のローテーション、各種ルール制定などを行うことになります。

法律事務所でリモートワークをする上での注意点

法律事務所がリモートワークを進めるにあたって注意すべきことには、次のようなことが挙げられます。

就業規則や個人情報保護に関する体制の整備

就業規則と個人情報保護に関する体制の整備は必須です。
上述したように、法律事務所でリモートワークが進まない原因は守秘義務との関係で個人情報の取り扱いに慎重であるからです。
リモートワークに関する就業規則の見直しと同時に個人情報保護に関する規定や、個人情報の扱い方(扱う時間・場所を決めるなど)を決めましょう

紙文化が残る法律業界なので、テレワークが可能な業務の洗い出しから始める

こちらも上述したように、法律業界は紙文化が残っているため、事務所にいなければできない業務も存在します。
そのため、テレワークが可能な業務とそうでない業務をきちんとを洗い出しを行いましょう。

案件によっては対面での面談義務があるものもあるので注意

面談自体はweb電話会議システムを利用すれば可能です。
ただし、債務整理・過払い金請求をする場合には対面での面談義務があり、新型コロナウィルス感染症対策も例外にはならず、現在でも対面での面談が必須となっています。
今後も案件によっては、対面での面談義務を弁護士会が課す可能性は否定できません。
Web面談で対応できない案件があることを念頭にいれておきましょう。

案件ファイル等のクラウドへのアップロードを徹底する

テレワークをするにあたって、クラウド上でのファイル利用が不可欠です。
自宅でいざ作業をしようと思っても、クラウド上にファイルがアップロードされていないと、作業ができなくなります。
業務のルーチンとしてクラウドへの案件ファイル等のアップロードは徹底するようにしましょう。

情報の持ち出しのルールの制定

テレワークをするということは情報を事務所から持ち出すことを認めることになります。
情報の持ち出しにあたっては必ずルールを制定しましょう。

  • 情報の持ち出しの申告についてのルールを決める
  • 持ち出しの際の媒体を限る
  • 持ち出しのための媒体には必ずパスワードをかける
  • パスワードの管理方法を決める
  • バックアップデータを必ず作っておく

などを決めましょう。

また、万が一の媒体を紛失する・盗難にあうなどした場合の報告方法や対応方法についても定めておきましょう。

業務用端末の準備

業務用端末の準備が必要です。 事務所の中でデスクトップパソコンを使用している場合、自宅に持って帰れません。
自宅のパソコンを利用させると、退職後にその人のパソコンに情報が残るなどして、回収できなくなることもあります。
セキュリティなどがしっかりしたパソコンを購入し、貸与するのが良いでしょう。
また、業務で電話を使う場合には、スマートフォンも併せて購入するのが良いでしょう。

勤怠の管理について

事務員でリモートワークをする場合には勤怠の管理をきちんとしましょう。
勤怠の管理は、本人がきちんと仕事をしているかどうかを把握するだけではなく、勤務時間外に仕事に従事させることで、精神的に疲弊させることがないようにする意味もあります。

勤務場所の制限について

勤務場所をきちんと制限しましょう。
リモートワークといってもどこでも仕事をしていいというわけではなく、きちんと業務を集中して行えて、守秘義務を守れる状況でなければなりません。
自宅で作業ができない事情がある場合には、リモートワーク用の施設を借りる、打ち合わせ等を覗いてはカフェやファミレスなどの施設で業務用のパソコンを利用しない、などの制限をかけるべきです。

承認・連絡体制についての整備

承認や連絡体制についてきちんと整備をしましょう。
作業をする際に、弁護士の指示で行い、承認に弁護士が承認印を押すということが行われている場合が多いです。
物理的に近くに居ないと、誰の指示でどのようなことをするのか、不明になってしまうということも珍しくありません。
どのような業務に誰の承認が必要なのかと、その連絡方法についても確認しておきましょう。

郵送物・宅急便・FAXなどの受領をするものについての確認をどうするか

郵送物や宅急便・FAXなどはどうしても事務所に届きます。 そのため事務所を空にするわけにはいきません。 事務所でしかできない作業について誰が担当するか、複数の人で担当する場合には出勤を当番制にするなどしましょう。

事務職員に対する守秘義務についての教育

事務職員に対する守秘義務についての教育を徹底しましょう。
事務職員の中には、守秘義務についての座学や日弁連の事務職員研修などを受けておらず、守秘義務について学ばずに業務に携わっている人もいます。
守秘義務をきちんと教育しましょう。

パソコンが苦手な弁護士へのフォローアップ

ここまで、情報を持ち出したり、クラウドツールを利用するなど、リモートワークに関するものを不自由なく利用できることを前提にお話してきました。
しかし、こういったIT技術やパソコンの利用が苦手であるという弁護士も存在します。
「よくわからないから…」と一人だけ事務所のルールに従わなかったり、担当の事務員に過度の負担をかけることがあります。
パソコンが苦手な弁護士へのフォローアップは確実に行いましょう。

まとめ

このページでは、法律事務所のリモートワークについてお伝えしました。
特に紙文化が未だに重要な法律事務所では、リモートワークが進んでいませんが、民事裁判がIT化され・働き方が多様化する中で、リモートワークは検討しておく必要はあります。
ロイオズは、クラウドでファイルやスケジュールを共有できるツールで、リモートワークはもちろん業務効率化にも役に立つツールなので、ぜひ検討してみてください。

人気記事