弁護士の独立についての統計情報

2023年02月09日

弁護士として勤務していると、独立することを検討する方も多いはずです。
ところが、「弁護士 独立」と検索すると「悲惨」「食えない」「独立失敗」といったキーワードが並びます。
独立は昔より難しくなったと感じる弁護士は多いかもしれませんが、実際には統計としてどのような数字が現れているのでしょうか。
独立する弁護士に関する統計情報をもとに、弁護士の独立について考えてみましょう。

独立する弁護士数について

独立する弁護士の数について統計を取ったものは存在しません。
しかし、2022年現在18,128合計の法律事務所のうち、弁護士が1人の事務所は11,169人で、およそ6割の弁護士は1人で独立している事務所です。
そしてその数は、

年度 弁護士が1人の法律事務所の数 法律事務所の数
2018年 10,038 16,720
2019年 10,374 17,252
2020年 10,525 17,417
2021年 10,841 17,772
2022年 11,169 18,128

と年々増加しています。 法律事務所全体の数が増加していることから、新たに独立する弁護士の数は年々増えている傾向にあるといえるでしょう。

独立するタイミングについて

弁護士として独立するタイミングはいつ頃が多いのでしょうか?
この点については、2018年に日本弁護士連合会が実施した「弁護士実勢調査(弁護士センサス)」によるアンケートをまとめた、「近年の弁護士の実勢について(弁護士実勢調査と事件動向調査を元に」のデータが参考になります。 このデータによると、
経営者弁護士(弁護士法人の社員弁護士も含む)・勤務弁護士が、

弁護士歴 経営者弁護士の割合 勤務弁護士の割合
5年未満 13.9% 66.8%
5年以上~10年未満 51.3% 28.1%
10年以上~15年未満 75.9% 12.0%
15年以上~20年未満 83.3% 8.0%
20年以上~25年未満 86.7% 7.6%
25年以上~30年未満 93.2% 1.0%
30年以上~35年未満 93.7% 1.1%
35年以上~ 86.7% 2.0%

という割合になっています。
この数字からわかるように、弁護士歴が5年以上になると半数以上が独立し、10年以上になると75%以上の弁護士が独立しています。
逆に、弁護士歴が10年を超えて勤務弁護士として勤務できるのは12%のみのため、10年以内には独立できる状況にしておかなければいけないとも考えられます。
このような統計になっている要因としては、

  • 弁護士になってから5年以内は実務経験・経済的基盤の整備(奨学金の返済や独立資金の貯蓄)などが必要である
  • 弁護士になって5年以上経過すると独立して稼ぐ力が要求され、それがなければ勤務弁護士として居続けることも難しい
  • 独立して稼ぐ力があるならば独立する

ということが考えられます。

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独立後の弁護士の収入について

独立後の弁護士の収入に関するデータを見てみましょう。
独立前・独立後の弁護士の年収を比較している調査自体はありませんが、厚生労働省が毎年行っている「賃金構造基本調査」と、日本弁護士連合会が2020年3月に行った「弁護士業務の経済基盤に関する実態調査」が参考になります。

令和3年賃金構造基本統計調査によると、企業規模計10人以上の弁護士(統計では「法務従事者」)の年収は8,173,200円でした

きまって支給する現金給与額584,700円✕12ヶ月+年間賞与その他特別給与額1,156,800円=8,173,200円

賃金構造基本統計調査令和3年 一般労働者 職種 表番号1 
「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」より

弁護士業務の経済基盤に関する実態調査のデータをまとめた、「近年の弁護士の活動実態について」(「弁護士業務の経済基盤に関する実態調査2020」を元に)によると、
弁護士の事業収入・給与収入の合計について、

  • 平均値2,558万円
  • 中央値1,437万円

となっています。

前者は勤務弁護士についてのもので、後者が独立弁護士・勤務弁護士両方を含めたものであると評価することができ、勤務弁護士の収入を大きく上回る数値が独立弁護士の収入として出ています。
もちろん、独立しても仕事がないような弁護士や、大規模な法人を運営している弁護士まで含まれているので、独立=収入アップとは一概に言えません。

独立する際の初期費用について

独立する際の初期費用にはどのくらいかかるのでしょうか。
参考になるデータとして、東京弁護士会が「東京で独立開業する。~独立開業マニュアル東弁版~ 第2版」に掲載されている独立開業についての費用のアンケートが参考になります。
このアンケートで中間値として、

費用の詳細 中間値
事務所賃貸借関係 943,000円
内装関係 580,000円
OA機器関係 250,000円
通信関係 96,000円
人件費その他 307,700円
合計 2,087,500円

という回答を得ています。
中には内装にこだわり300万円以上の出費をしている弁護士もいれば、0円・23,000円程度でほぼお金をかけていない人もいます。
またこちらは東京弁護士会なので、地方で独立する際には事務所の賃貸借関係の費用はもう少し安く見積もることができると考えられます。

弁護士の競争の激化

独立をする以上は弁護士間の競争が激化していることとも向き合う必要があります。
では実際にどの程度、弁護士の競争は激化しているのでしょうか。
一つの目安として、弁護士数と民事事件の5年ごとの件数を見てみましょう

弁護士の数(弁護士白書より) 民事・行政事件の新受(司法統計より)
1950(昭和25年) 5,827 429,853
1955(昭和30年) 5,899 827,659
1960(昭和35年) 6,321 970,134
1965(昭和40年) 7,082 1,255,547
1970(昭和45年) 8,478 1,231,321
1975(昭和50年) 10,115 1,076,665
1980(昭和55年) 11,441 1,469,848
1985(昭和60年) 12,064 2,548,584
1990(平成2年) 13,800 1,715,193
1995(平成7年) 15,108 2,411,360
2000(平成12年) 17,126 3,051,709
2005(平成17年) 20,224 2,712,896
2010(平成22年) 28,789 2,179,358
2015(平成27年) 36,415 1,432,322
2020(令和2年) 42,164 1,350,237

司法制度改革で弁護士の数は増える一方、過払い金バブルが落ち着いた影響で訴訟となる件数は減少傾向にあります。
弁護士間の競争が激化していることは数字上でも明らかなので、弁護士として生き残るためには、弁護士としてのスキルのみならず、新規案件を獲得するためのスキルも磨かなければならない、といえるでしょう。

まとめ

この記事では、弁護士の独立についての統計情報についてお伝えしました。
弁護士として独立する人の数は増え続けており、いずれは独立を検討することになります。
激化する競争を勝ち抜くためには、弁護士としてスキルのみならず、マーケティング・弁護士業務の円滑な遂行など経営スキルも求められます。
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