弁護士は独立時に事務員を雇用するべき?
雇用のメリットや気を付けるポイントも解説!

2023年06月26日

独立を考えている弁護士の方で事務員を雇用するべきか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

今回は弁護士が独立時に事務員を雇用すべきかどうかとまた、雇用時のメリットや気を付けるポイントを解説していきます。

弁護士は独立時に事務員を雇用するべきか

弁護士が独立開業をする際に、事務員を雇うかどうかは悩ましい問題です。

独立後の事務所の規模や個人の能力によっても雇用すべきかどうかが変わってくると思いますので、この記事で「するべき」「しないべき」という単純な回答はできません。

しかしながら、事務員の雇用を考える際に直面することになる大きな壁については、独立するすべての弁護士が知っておく必要があるため、この記事で解説していきたいと思います。

事務員を雇用するために必要な売上とは?

まず、事務員を雇用するためには、一定の売上を継続的にあげていく必要があります。

一般的に、年間750万円〜1000万円ほどの売上がないと、事務員の給与や雇用に伴うコストを賄うことは難しいと言われています。

従業員を雇用するとなった場合の事務所が負担する必要経費には、以下のようなものがあります。

  • 給与・社会保険料
  • 労働保険料
  • 退職金や年金
  • 労働時間外手当
  • 労働環境整備費用や研修費用など

そこで、フルタイムの雇用にこだわらず、週 1〜3 回のパート勤務などといった柔軟な雇用形態であれば、費用を抑えて事務員を雇用することが可能となります。

また、独立後の事務所の規模や業務量によっても雇用人数や雇用形態は異なるため、個々の事情に合わせて判断することがポイントとなるでしょう。

事務員がいないと売上アップには限界がある

弁護士が事務員を雇用しない場合での売上アップには限界が訪れます。

なぜなら、弁護士がすべての事務作業を行わなければならなくなるため、請求書の作成や発行、依頼者や相手方からの電話対応、裁判所への書類送付など多岐にわたる事務作業に時間を割かなければならなくなるからです。

当然、雑用をしている間は、専門的な業務に時間を割くことができなくなるので、必然的に取り組める案件数は自ずと限界が訪れます。

したがって、事務員を雇用しないと、継続的に事務所の売り上げをあげていくことが困難になる可能性があります。

事務員を雇用する際のメリット

事務員を雇用することには、以下の3つのメリットがあります。

弁護士しかできない仕事に時間を使える

弁護士の専門性を最大限に活かすためには、事務作業を効率的に処理する必要があります。

具体的には、請求書の作成や発行、書類の整理、電話対応などが含まれます。これらの業務は必ずしも弁護士自身が行う必要はないので、これらの業務を事務員に任せることで、弁護士はより専門的な業務に時間を割けるようになります。

したがって、事務員を雇用することで、弁護士はクライアントとのコミュニケーションや法的調査、訴訟戦略の構築などに多くの時間を費やすことができるようになります。

その結果、自身の専門性を磨いて、より高品質なサービス・成果物を提供することができるようになるので、クライアントの満足度も向上させることが可能となるでしょう。

事務所の信用度が上がる

弁護士が一人で運営している事務所より、事務員を雇用している事務所の方が、より信用度が高くなる傾向にあります。

依頼者は事務所内に専任のスタッフがいることで安心感を抱く傾向にあります。依頼者の中には、弁護士に相談・依頼することに大きなプレッシャーを抱いている人もいますが、そのような場合でも、事務員の丁寧な対応や細やかな気配りによって事務所への信頼感・安心感が向上する傾向にあります。

事務員は電話対応や来客対応などで依頼者とのファーストコンタクトを取ることが多く、プロフェッショナルな対応をすることによって、事務所に対する印象や信用度に影響を与える可能性が高いです。

したがって、事務員の存在によって、事務所のイメージや信用度が向上し、依頼者から信頼される可能性が高いです。

留守を任せられるので外出しやすくなる

事務員を雇用することで、弁護士は留守番を任せることができるようになります。

裁判所への出廷や依頼者との打合せ、セミナーやミーティングへの参加など、事務員に事務作業や電話対応を任せておくことで、事務所を稼働させたまま弁護士は外出することができます。

弁護士の外出する機会が増えることで、新たなビジネスチャンスや人脈を構築する機会も増えるということになります。

このように普段、接点がない業界や紹介される人と会う機会が増えれば、事務所の知名度や広報にも効果が高まる可能性があります。

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事務員を雇用する際の注意点

事務員の雇用を検討する際には、以下の注意点を留意しておく必要があります。

人件費が発生する

事務員を雇用するということは、人件費が発生するということです。

給与以外にも、社会保険料や年金などを負担する必要があります。他にも、労働時間や休暇制度の遵守など、雇用主としてさまざまな責任が発生することになります。

特に正社員を雇用する場合、1 人当たり少なくとも年 400 万円ほどの費用がかかることが一般的です。事務所の経済的な余裕や売上の安定性を考慮して、これらの費用を捻出していくことが必要となります。

さらに、案件が減少したからといって、退職勧奨や解雇などによって従業員を減らすことは容易ではありません。したがって、ある程度安定的な売上があることが人を雇用するうえでの前提条件となっています。

求人を出すのにも費用がかかる

事務員を採用する場合、求人広告の出稿費用がかかることも忘れてはいけません。

求人を出す場合は、より多くの求職者の目に留まることが重要となりますが、一定の知名度を有している求人サービスや求人媒体を利用すると,求人広告を掲載するのに高額な費用が発生します。これに加えて、面接や選考プロセスのために時間やリソースを割く必要があります。

したがって,一般企業が運営している求人媒体などで求人を出すためには費用や時間がかかることを留意しておく必要があります。

そこで求人広告を出す費用を抑えるために、各弁護士会への求人掲載や知人からの紹介、インターンシッププログラムなどの活用を検討してみることがおすすめです。

法律業務経験者が少ない

日本全体を見ると、法律事務所で勤務経験がある方や事務員経験のある方の数は限られています。

そのため、一般企業から転職者を採用する場合、法律事務所の業務に慣れるまでに時間がかかる場合があります。法律の専門知識やスキルを持っていない場合は、事務員として業務をこなしてもらうために十分な教育トレーニングや事務員研修を実施する必要があるでしょう。

新入社員向けの基礎的な法律研修プログラムのセミナーを受講してもらったり、事務所内で弁護士がマンツーマンで指導したりすることで、今後必要となる業務知識やスキルを習得できる環境を整えていくことが重要となります。

事務員の雇用と業務管理システム

事務員を雇用する、しないに関わらず、適切な業務管理システムを導入し業務の効率化と生産性を向上させることは必要です。

事務員を雇用しない場合は、業務管理システムを導入することで、弁護士1人当たりの業務負担を減らすことができます。

近年の目覚ましい IT技術の進歩により、書類管理やタスク管理、スケジュール管理などの日常業務は、業務管理システムを導入で弁護士1人でもスムーズにこなすことができるようになっています。

従来は事務員が行っていた作業を、システムが代行することで、人的なコストや時間を削減することが実現できます。

一方で、事務員を雇用した場合であっても、業務管理システムは便利なツールとして活用することができます。

業務管理システムを導入することによって、情報共有や複数人のタスク管理、プロジェクト管理など、チーム全体の効率を最大限向上させることができるようになります。

事務員が管理している業務に関連する情報やデータをシステム上で一元管理することにより、チーム内のコミュニケーションや作業の進捗管理などを円滑に行うことが可能となるのです。

このように業務を効率化することで、業務管理システムを活用して業務フローを見直したり改善策を検討したりして、さらなる品質・サービスの向上を図ることが可能となります。

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